はじめてのAI・ChatGPT 第1回 AIとは何か――まず「できること」の輪郭をつかむ
ChatGPTを開いたものの、何を入力すればよいか分からなかった人のための入門連載。第1回は、AIにできること・苦手なこと、検索との違い、答えを確かめる習慣を身近な例で整理します。
文: 冨上健太郎
「ChatGPTが便利らしい」と聞いて画面を開いてみたけれど、最初に何を入力すればよいか分からず、そのまま閉じてしまった。そんな人のための入門連載「はじめてのAI・ChatGPT」を始めます。全16章の入門書の原稿を、1章ずつ公開していきます。
目的は、AIの仕組みを専門家のように説明できるようになることではありません。自分の端末でChatGPTを開き、身近な用事を一件進め、出てきた答えを自分で確かめられるようになることです。
第1回は、操作の前に「AIとは何か」を整理します。
「AIを使ってみたい」と思っても、AIという言葉が大きすぎて、最初の一歩が分からないかもしれません。ニュースでは人の仕事を変える技術として語られ、スマートフォンでは何気なく使われています。この章では、難しい仕組みを覚える前に、私たちが画面で何をするのか、返ってきた答えをどう受け止めるのかを整理します。
この本で扱うAIは、文章を入力すると、文章で返してくれるものです。写真やファイルも渡せますが、基本は「自分が材料や目的を伝え、返答を見て、必要なら話を続ける」という会話です。たとえば、会合の案内文を作るとき、白紙から一行目を書くのが大変なら、「地域の交流会のお知らせを、初参加者向けに考えてください」と入力します。返答が堅ければ「もう少し親しみやすく」、長ければ「半分の長さに」と続けます。こちらが考えるのをやめるのではありません。書き始め、読み直し、直す作業を分担します。
AIは一つの機械の名前ではない

AIは「人工知能」の略です。ただ、この言葉は広い範囲を指します。写真の中の人物を見分ける機能、音声を文字に変える機能、商品の候補を示す機能、文章を作る機能。いずれもAIと呼ばれることがあります。だから「AIができる」と聞いたことを、すべてのAIサービスが同じようにできると思う必要はありません。電化製品という言葉に冷蔵庫も電子レンジも含まれるのと似ています。まずは、今使うものの役割を確かめます。
本書の中心は、ChatGPTというサービスで使う「対話型」のAIです。質問に一回だけ答えるものとして使っても構いませんが、会話を重ねられることが特長です。自分の頼み方が不十分でも、返答を見てから条件を足せます。この違いを知ると、「最初から上手な指示を書かなければ」と身構えずに済みます。
たとえば友人に「お礼の文面を一緒に考えて」と頼むとき、最初に相手の年齢、関係、長さ、送る手段を完璧に説明しないこともあるでしょう。案を聞いてから「少し改まった相手です」と伝えます。AIとの会話も、この進め方でかまいません。ただし友人なら共有している事情を、AIが知っているとは限りません。あなたの店の名前、客層、開催日時などは、必要な範囲で伝える必要があります。
文章を作るAIは、どうやって答えているのか
対話型AIは、大量の文章などから言葉のつながりや表現の傾向を学び、入力された内容に続く答えを作ります。人が経験した出来事を思い出して話すのと同じではありません。辞書の一項目をそのまま取り出しているわけでもありません。質問の意味、会話の流れ、渡された資料などを手がかりに、その場で返答を組み立てています。
ここで「次に来る言葉を予測するだけなら、なぜ説明や相談ができるのか」と疑問に思うかもしれません。文章には、説明の順序、比較の形、理由の述べ方など、多くの規則が含まれます。AIはそれらを使って、初めて見る依頼にももっともらしい答えを作れます。短い文章の言い換えから複数の条件を踏まえた案づくりまで、用途が広いのはそのためです。一方で、「もっともらしい」と「正しい」は同じではありません。読みやすい文でも、数字や固有名詞を間違えることがあります。
実際に、次の二つの質問は似ているようで役割が異なります。「交流会を紹介する短い文を三案ください」は、新しい文章の案を作る依頼です。「若葉交流室は10月18日に開いていますか」は、現実の最新情報を確かめる依頼です。前者はAIの得意な領域です。後者は施設の公式案内や管理者に確認すべき情報です。AIが答えたとしても、その文章だけでは会場の利用可否は決まりません。

図は答えの使い方を示しています。画面の実物ではありません。
「調べる」「考える」「決める」を分ける

AIを使うとき、ひとつの依頼の中に三つの作業が混ざりやすくなります。第一に、材料を集めること。第二に、材料を整理して案を作ること。第三に、案を採用して行動することです。この三つを意識すると、AIに頼める範囲が見えます。
たとえば、地域の交流会を開くとします。会場の正式名称と空き状況は、施設の案内を調べるか問い合わせます。集めた情報をもとに、案内文の順序や見出しを考えるところではAIが役立ちます。そして、参加費をどうするか、文章を誰に送るかは、主催者が決めます。AIに相談して判断材料を増やすことはできますが、責任を伴う決定は自分たちのものです。
「AIに聞けば正解が出る」と思うと、答えを一つ受け取って終わりになりがちです。むしろ、AIには複数の案や比較の観点を出してもらうほうが有効な場合があります。「初参加者が不安に思いそうな点を五つ挙げて」「この案内文で日時と場所を見落としやすい箇所を教えて」と聞けば、自分で見直す手がかりになります。AIが述べた懸念も事実とは限りませんが、点検の出発点にはなります。
AIが得意な仕事を、身近な場面で考える
入門書で「要約」「文章作成」とだけ書かれていても、自分の生活に結びつかないかもしれません。もう少し具体的に見てみましょう。
町内会の連絡文を作る人なら、長い議事メモから住民向けのお知らせに必要な部分を抜き出す。小さな店で働く人なら、店頭に貼る休業案内を丁寧な言葉にする。家族の予定をまとめる人なら、持ち物と出発時刻を一枚のチェックリストにする。新しい家電の説明書を読む人なら、分からない言葉をやさしく説明してもらう。これらは、AIが「材料を受け取り、形を整える」使い方です。
下書きの依頼には、次のような言い方が使えます。
日曜日の親子向け工作会のお知らせを作りたいです。日時と場所は未定です。初めての人にも伝わる見出しと、100字程度の紹介文を三案ください。未定の情報は[日時]、[場所]と書いてください。
この依頼では、決まっていないことを「未定」と伝えています。AIが勝手に日付を入れた場合は、その部分が誤りだと見つけやすくなります。逆に「工作会のお知らせを完成させて」だけでは、読み手が必要とする日時や費用を、AIが推測してしまうかもしれません。自分が知らないことを明示するのは、上手な質問の基本です。
長い文章の整理を頼むときも、目的を一つ添えるだけで結果が変わります。「要約して」なら短くなるでしょう。「初参加者向けの案内に使うので、集合時刻・持ち物・注意事項だけ抜き出して」と頼めば、必要な情報に焦点が合います。AIに文章を見せる方法は第11・12章で詳しく扱いますが、まず「何のために読むか」を自分で決めることが大切です。
苦手なことを知ると、使いやすくなる
AIの答えで注意したいのは、分からないことまで自然な文章で埋めてしまうことです。実在しない出典を挙げる、二つの似た名称を混同する、古い情報を今のものとして説明する、渡した資料の表を読み違える、といったことが起こり得ます。これを防ぐ万能の一文はありません。頼み方を工夫し、元の資料に戻って確かめることが必要です。
数字を含む仕事なら、まず「何を計算してほしいか」を明確にし、結果を電卓や元の表で照らし合わせます。予定なら、日にちと曜日が一致するかをカレンダーで確認します。引用なら、元のページに本当にその記述があるかを開きます。名前や住所なら、公式の表記と一致するかを確認します。検査する箇所がはっきりしていれば、AIの文章を怖がりすぎずに利用できます。
AIに「自信がないところは分からないと書いて」と頼むことも役立ちます。ただ、その指示を入れたから必ず正しく「分からない」と答えるわけではありません。大事な情報ほど、別の手段で確かめます。現実の行動につながる情報、たとえば健康、契約、お金、行政手続きなどは、専門家や公式窓口の案内を優先してください。AIは言葉を整理する補助にはなりますが、最終的な確認先を置き換えるものではありません。
また、AIは自分が見ていないものを正しく把握できません。「この書類を直して」と書いても、書類を添付していなければ内容は伝わりません。「さっき店で会った人へのお礼を考えて」と言っても、その人との関係は分かりません。必要な材料を伝えるときは、個人情報を渡しすぎないよう、架空の名前やぼかした説明から始めてください。AIに伝える材料を選ぶことも、使い手の仕事です。
検索との違いを、一つの質問で比べる

検索エンジンで「パソコン 画面 拡大」と調べると、設定方法を説明したページの一覧が出ます。ページを開き、自分の端末に合う説明を探します。AIに「文字が小さくて読みにくいです。Windowsのブラウザで、ページだけ大きくする方法を順に教えて」と聞くと、自分の状況に合わせた説明が返るかもしれません。前者は情報源を探すことに強く、後者は説明を自分向けに組み立てることに強みがあります。
ただし、AIが示した操作が現在の端末に合うかは画面で確かめます。設定名は更新で変わります。AIに「画面にその項目がありません」と返してもよいですし、端末メーカーの公式案内を探してもよいでしょう。検索とAIは、どちらか一方を選ぶ競争ではありません。AIで疑問を言葉にし、公式情報で確かめ、分からない説明をまたAIにかみ砕いてもらう。行き来する使い方が自然です。
ここで、検索結果にも注意が必要です。上に出たページが必ず公式とは限りません。広告が混じることもあります。最新の営業時間、料金、受付先などを確かめるときは、運営者の公式サイトか連絡先にたどり着いたかを見ます。AIからリンクを受け取ったときも、リンクの先に書かれた内容と、AIが要約した内容を照らし合わせてください。
一つの案内文で「助けになる部分」と「確認する部分」を見分ける
架空の雑貨店「若葉商店」が、秋の店内イベントを知らせる場面を考えましょう。決まっているのは「親子で参加できる工作会を開く」「参加費は無料」の二点だけです。開催日、開始時刻、定員はまだ決まっていません。担当者がAIに「若葉商店の秋の工作会の告知を作って」と頼んだところ、次のような案が返ったとします。
10月18日(日)14時から、若葉商店で親子工作会を開催します。定員は先着20組。参加費無料です。お気軽にご参加ください。
読みやすい文章ですが、このまま掲示してはいけません。「参加費無料」以外の日時と定員は、担当者が伝えていないからです。日付と曜日の組み合わせが合っているかどうか以前に、まだ決めていない情報が確定事項として書かれています。こうしたとき、AIが「悪意で嘘をついた」と理解するより、「空欄を自然な文で埋めた」と見ると対処が分かりやすくなります。
修正するなら、次のように伝えます。
日時と定員は未定です。決まっていない情報を作らず、[開催日][開始時刻][定員]と残してください。参加費無料は決定済みです。親子が楽しめる内容を120字ほどで紹介してください。
返答を受け取ったら、また確認します。未定の欄が残っているか、無料という条件が正しく入っているか、店名を間違えていないか。確認の結果、文の調子が合わなければ「もっとやさしい言葉に」と続けます。この一連のやり取りが、AIを使って文を作る基本形です。答えを一回受け取ることではなく、条件を伝え、案を点検し、必要なら直すことが仕事になります。
現実の資料を扱うときも同じです。「この表から合計を出して」と頼んだら、どの列を足したか、空欄をどう扱ったかを確認します。「この文章を要約して」と頼んだら、元の文章にない主張が混じっていないかを見ます。AIが得意な文章の整え方と、人が確かめる事実の部分を分ければ、作業が前に進みます。
AIは質問の言葉に左右される
同じ資料を渡しても、問い方によって返答の焦点は変わります。たとえば一枚の会議メモに「日時」「参加者」「決定事項」「次回までの宿題」が書かれているとします。「要約して」と頼むと、全体の短い説明が返るでしょう。「次回までに私が担当する仕事だけ抜き出して」と頼むと、別の部分に注目します。どちらかが必ず正しいというわけではありません。読者の目的が違うのです。
目的を決めていないときは、まずAIに「この資料から何を読み取れるか、見出しを付けて整理して」と頼む方法もあります。その結果を見て、自分が必要な情報を選びます。見出しをつける、順番を変える、短く言い換える、例を足す。こうした途中の作業はAIに頼みやすい一方、資料そのものが不正確なら、整った文章も正しくなりません。元の材料を確認することは、出力を確認することと同じくらい大切です。
質問文は長さよりも、必要な情報が入っているかで考えてください。「初参加者向け」「持ち物は筆記具」「日時は未定」という短い三つの条件は、長い飾り言葉より役立つことがあります。AIのための特別な話し方に変える必要はありません。相手に伝わるように、自分の用事を具体的に書きます。
「説明が分かった」と「行動できる」は別
AIに分かりやすく説明してもらうと、それだけで問題が片づいたように感じることがあります。しかし、説明を読めたことと、現実に正しい手順を踏めることは別です。たとえば「市の施設を借りる方法」をAIに聞き、申し込みの流れを教わったとします。申し込み期限、利用資格、料金、必要な書類は自治体や施設によって違います。AIの返答を読んで全体像をつかんだら、実際に申し込む前に、利用する施設の公式案内を開くか窓口へ確認します。
この順番は、AIの答えを否定するためではありません。全体像が分かれば、公式案内のどこを読むべきかが分かるからです。「予約開始日はどこに書いてありますか」「区外の団体でも利用できますか」と具体的に調べられます。AIを最初の地図として使い、実際の道標はその場所の案内で確かめる。こう考えると、AIの便利さと確認の必要性が両立します。
文章作成でも同じです。AIが丁寧なお礼文を作ったとしても、その相手に本当に送ってよいか、送る時期は適切か、約束していないことを書いていないかは自分で見ます。言葉として自然でも、関係や事情に合わない文はあります。AIが書いた「また来週お会いしましょう」を、来週会う予定がない相手に送らないようにする。こうした小さな確認の積み重ねが、安心して使う土台になります。
失敗しても、会話の中で立て直せる
初めての質問で、意図と違う答えが返るのは珍しいことではありません。何を頼めばよいかまだ分からないなら、「私は初めて使います。確認したいことを一つずつ聞いてください」と送れます。AIから質問が来たら、分かる範囲だけ答えます。「まだ決まっていません」と返しても構いません。
たとえば「イベントのお知らせを作りたい」と送った後で、AIが学校行事のような案内を作ったとします。そこで「学校ではなく、小さな雑貨店の親子向け工作会です」と訂正します。さらに「店頭に貼るので、大きな見出しを一つ付けて」と条件を足します。最初の答えを無理に使う必要はありません。会話を通して、必要な条件を発見していく使い方もあります。
ただし、何度も直しても日付を勝手に入れるなど、前の条件を引きずると感じたら、新しいチャットで確定した条件だけを渡し直します。AIとの会話は、毎回積み重ねるほどよいわけではありません。材料を整理して渡し直すと、返答も整理されやすくなります。この判断は第8章で実際の画面とともに練習します。
最初の練習――自分の「小さな用事」を一つ選ぶ
この章では、まだChatGPTを開かなくても構いません。紙かメモアプリに、今週の小さな用事を三つ書き出します。たとえば「家族への連絡を短く書きたい」「難しいお知らせを読みたい」「集まりの持ち物を整理したい」です。次に、それぞれを「材料を集める」「文章を整える」「自分が決める」のどれに近いか考えます。一つの用事が複数にまたがっていても大丈夫です。
その中から、個人情報を入れなくても試せるものを一つ選びます。「知人の病気について詳しく相談する」より、「架空の交流会の案内文を作る」のほうが、最初の練習には向いています。練習の目的は、すぐに大きな成果を出すことではありません。自分で材料を選び、返答を確かめる感覚をつかむことです。
この章の確認: AIは案を作ったり説明を整えたりできます。知らない事実を確定する役割は任せず、必要な情報は元の資料や公式情報で確かめます。次の章では、そのAIと会話するためのサービスであるChatGPTと、「モデル」という言葉を整理します。
次回は「ChatGPTとは何か――サービス、モデル、会話を見分ける」です。
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